「昼顔」
「昼顔」を見た。
監督のブニュエルがとても好きなので観たいとはずっと思っていたのだが、カトリーヌドヌーブがどうにも好きになれず、今まで見そびれていた。
グーグルで昼顔と引くと、タイトルに「昼顔」を含んだ日本の不倫ドラマの記事がずらり検索され邪魔をする。「昼顔」なら、妻であり娼婦である物語であって、不倫など関係がない。「娼婦のように」ではなく「娼婦」そのままである。高級娼婦である貞淑な妻。さらに物語では殺人の前科のある凶暴な若い客と狂気じみた恋情に呑まれ破局が迫る。危険も度を越している。そもそも主人公は不感症ーこれは死語かーの設定だが、一方で折檻と陵辱の妄想が一体誰のものなのか明かされない。あらゆる均衡が内部で崩壊している硬質な美女のドラマということになるが、そもそもどこからどこまでが妄想で、一体何が現実なのか不明である。輪郭が溶解しているなんとも言えない欠損による不安定感。
ところでカトリーヌドヌーブはものすごい美人らしいが、どうしても魅力を感じない。これは多分個人的な嗜好好みの問題だ。絶世の美女と感じられない分だけ、私は物語の魅力半分も味わえなくなっているのだろうと思う。
ブニュエルの恣意的で作為的な構想に翻弄される。何か奇妙な夢を見てしまった事後感。
全体が象徴であり、寓話であるということかもしれない。
何度でも繰り返し見て、自由に自分で種明かしを発見してみたくなる。