P・アルモドバル -「All About My Mother」(1999)

All About My Mother(1999)

スペイン映画。愛する息子を不慮の事故で亡くしたシングルマザーが人生の再生へ向かう叙事詩。こう書いて間違いではないが、それではやはり物語としてはつまらなそう。全然違う。昔の親友に会いに行った先は、フランスのブローニュの森のように路上で客をとる娼婦たちがたむろする交渉場。そこで馬乗りになった薬中の男から暴力振るわれだみ声で叫んでいる元男の女性。彼女こそが昔なじみの親友。出鼻からよそ行きの平板な俗習を踏み台にして物語が進んでゆく。さまざま縁が絡み合い、さらに刻まれる死と誕生する生。登場するのは女性と元男だった女性ばかり。亡くなった息子だけが美しく、あと登場する男は認知症を患い娘の顔も忘れた老紳士と、いらいらして気分悪いからフェラしてくれと元男の娼婦に楽屋で迫る劇団員だけ。女たちは友情深くそれぞれ自分の欠落を呑み込みながらかたわらにいたわりを失わない。いい物語。
その中で一つ大切なアイコンが舞台劇「欲望という名の電車」。マーロンブランドとビビアンリーの映画、また久しぶりに観たいと思った。

予告編のコピー
Part of every woman is a mother
Part of every woman is an actress
Part of every woman is a saint
Part of every woman is a sinner
And Part of every man is a woman