安藤サクラ-「百円の恋」2014

安藤サクラの凄まじさに圧倒された。Wikiによると、こうある。「だらしない女性の役を演じるときは、『女優さんが汚い役を演じている』と思われるのが嫌で、本当に汚くだらしない人間になろうと心がけるが、そのために歯をガタガタにしようとした際には歯科医に断られた」なるほどと合点がいく。「『百円の恋』では、ニートからボクサーになる主人公を演じるため、まず太ってだらしない体型を作り、撮影の後半の10日間で体を絞りプロテストに合格できるようなボクサーの体型を作っていった」まるで、デニーロだ。体型が本当に別人のようになる。あとの絞り切ったボクサー体型よりも、はじめのたるみきったぜい肉の腰回り、それは太っている身体ではなくニート生活のだらしない身体だ。凄い。こんな女優見たことがない。めちゃめちゃカッコイイ。
これは最初に脚本単独が地方映画祭で受賞し、その後映画化され、改めて日本アカデミーの脚本賞を受賞している。脚本、うまい。例えば、最大の見せ場であるボクシングの試合もどう展開させるかとてもむずかしい。劇的に勝利に持っていくのもださいし、まず最初にやられっちまうのもいいが、せっかく感が残ってしまう。その塩梅、すごくうまく切り抜けてる。さらに最後のダメンズと出会う場面。え、やっぱり会っちゃうの?と思いつつ、最初の言葉、距離の取り方、拒否や躊躇いや安心からの号泣など、ぎりぎりで助かっている。しかしそれを救ったのはサクラの「子供のように声を上げて泣く」シーン。これは僕も小説や脚本で書くことあるのだけれど、実際には演技でほとんど目にしたことがなかった。多分、演出家や俳優が人生の中でそういう泣き方を見たことがないんだろうと思っていた。初めて演技でそれを見た。感動した。
いやあ、すごい女優だ。びっくりした。
実は僕、奥田瑛二とその嫁が苦手だ。実はものすごく苦手だ。長女が新聞に書いたエッセイを読んだときも、こらあかんと。肌が合わない。だから、「万引き家族」でケイトブランシェットが安藤サクラを絶賛したと聞いても偏見が先立っていた。やっぱり、先入観はあかんね。
他の安藤サクラ作品観たい。
ちなみにこの脚本家は下の「14の夜」の監督v。