「怒りの葡萄」

「怒りの葡萄」
見たかった映画なのだが、貧困や矛盾が社会的問題と覚醒するエンディングに少し混乱した。貧困農民を騙し駆り立て互いに争わせて暴利を搾取する農園主。貧困民を毛嫌いし、その貧窮ぶりを侮蔑しながらも仕事を奪われることを怒り、武装して地域から排除する地元民。流民コミュニティを共産主義者だと憎み策謀巡らし暴力的に襲撃をはかる自警団。争議を呼びかける元牧師を闇夜に襲い殺害する雇われ警備員のゴロツキたち。それを見て仮出所の身ながら反撃して殺害してしまった主人公。
どうせ終われ逃げるなら、元牧師の言葉生き様を反芻し「答えを探したい」という。「団結」できれば、という。一人家族と別れ、旅立つ。
「団結」。「連帯」でもいい。どうしてか、もう心動かない。巨大なる、巨大なる力に抗すること。この事態で、ようやく団結の真義があらわれるのだろうか。
昔見ておれば、無邪気に高揚しただろうに。金属的な冷たい沈黙がキリキリと心を浸す。
現代の映画。