2019.10.19「第三回全国同人雑誌会議」

2019.10.19「第三回全国同人雑誌会議」@お茶の水 池坊会館
なぜいま同人雑誌か
第3回全国会議に向けて 五十嵐勉

  流されず、考える力を

 広がる電子媒体
 活字文化が危機に瀕している。深刻化する出版不況に加え、週刊誌・月刊誌の売り上げも下降線を辿り、新聞の購読者さえ激減している。
 これはパソコン、スマホの普及により、電子媒体が普遍化したためで、特に若い世代はほとんど新聞や本を読まず、もっぱら情報をこの媒体に依存している。メールやフェイスブック、ツイッターの広がりは、紙媒体をはるかに超えている。
 しかしこの趨勢に完全に身を任せていいのだろうか。我々はものを考えるとき、時間を止め静かな空間で思考する。しかし電子情報は、過多の洪水性と、動画的傾向のために、いや応なく流動性のなかに巻き込んでいく。その結果、思考は浮薄化し、享楽化、刹那化する。
 人間にとって最も重要なものは、深く考える力だろう。思考力は筋肉と同じで、一朝一夕に身につくものではなく、地味な努力と鍛錬のうちに養われていくものである。我々は生きた言語や活字による思考を人間の基本的な能力として保持していかなければならない。’言葉で物事を捉え、世界を感受し、文章で思考を組み立て、姿勢や態度に強く繋げていくことは、人間にとって歩くことや手を使うことと同じ重要な力である。人は言葉によって本質を捉え、言葉によって決断するのであって、その能力が衰退することは精神を弱体化する。言葉の腐敗は文化の腐敗となる。
 その意味で、詩を作り文章を紡ぐ同人雑誌の活動は、電子世界に向かい合うものとしていっそう重要性を増している。この根本的な領域から、同人雑誌の活動を見直し、活字文化を保持する基盤の一つとして新たな力を興すことが求められている。もともと日本文学は、大正期の志賀直哉の「白樺」、芥川龍之介が作品を発表した「新思潮」、昭和初期の川端康成が活躍した「文芸時代」など同人雑誌が基盤を支え、母体となってきた。
 新しいつながり
 同人雑誌界を時代の要求の面から掘り起こし、再生復興の力とすることは可能かー今それが問われている。書き手の新しいつながりを作り、同人雑誌作品への賞など奨励を図り、逆にインターネットを利用して作品をだれもが読めるようにするなど活性化の中から活字文化への新たな力が湧き出るはずである。
 この秋十月十九日に開かれる全国同人雑誌会議へ向けて五百以上の誌に呼びかけている。提言を受け止め、具体的な展開の方法を議論する場にしたい。新たな同人雑誌の結合と復興をめざし、建設的な第一歩を踏み出せることを切望している。
  (いがらし・つとむ 作家。全国同人雑誌振興会代表、『文芸思潮』編集長)
      ◇
 全国の同人雑誌関係者が連帯とネットワーク強化を目指して集う第三回全国同人雑誌会議は十月十九日、東京都千代田区神田駿河台、池坊東京会館大ホールで開かれる。二〇一〇年に徳島県で第二回が開かれて以来の開催となる。
 作家の三田誠広氏が「文学の理念と文芸ジャーナリズム」をテーマに基調講演を行うほか、作家で中部ペンクラブ会長の三田村博史氏が「いまなぜ同人雑誌か」と題してスピーチをする。また、同人雑誌に携わる人々によるシンポジウム「同人雑誌の新たな結合に向けて」もある。
 同人雑誌に所属していない作家や書き手も参加可能。参加費一万円(会議後の懇親会費を含む)。申し込み、問い合わせは同会議事務局「文芸思潮」 電03・5706・7847 メールアドレス bungei@asiawave.co.jp へ。
(東京新聞 2019/09/12))

同人誌の未来熱く
全国の主催者ら集結、激論

——————————–
 「第三回全国同人雑誌会議」(東京新聞後援)が十九日、東京都千代田区の池坊東京会館で開かれ、北海道から九州までの同人誌主宰者ら約百二十人が参加した。会議は九年ぶりの開催で、担い手の高齢化が進む同人誌や活字文化への危機感、将来のあり方などについて、激論が交わされた。
——————————–
 会議は冒頭、主催する中部ペンクラブの三田村博史会長と『文芸思潮』の五十嵐勉編集長があいさつ。第一部では、作家の三田誠広さんが基調講演「文学の理念と文芸ジャーナリズム」を行った。作家の中上紀さんはスピーチで、作家の両親(故中上健次さん、紀和鏡さん)が同人誌『文芸首都』を通じて出会ったことから「『文芸首都』がなければ私自身もこの場にいることはかなわなかった」と語った。
 第二部から会議に入り、同人誌代表者らがパネリストして登壇。「同人誌は消えない」との発言もあれば、「世に出るためには同人誌から、という時代ではなくなった。何を励みに書いていけばいいのかが、最大の悩み」との発言も。
「若者を呼び込むには、同人誌の社会的地位の向上が必要」「全国組織を」等の提言があった。会場からも「今の社会はなんでも視覚芸術だが、われわれは言語芸術で闘う」「お金や名誉がほしくて書いているわけじゃない。われわれの心の中には書かなきゃならないことがある。そのための場所を守るには、皆が手をつながなくては」等、熱のこもった意見が相次いだ。
 参加者の一人、一九六五年創刊の同人誌『弦』(名古屋市)代表の中村賢三さん(七九)は「同人誌にはそれぞれの意見があり、今回もそれが聞けて有意義でした」と話していた。(増田恵美子)
(東京新聞 2019/10/30 夕刊)