古本購入
久しぶりに町の古書店に行った。
中公新書「世界の名著」「日本の名著」は良書。同名の箱入りシリーズ本も素晴らしいが、これはそれぞれの書を名だたる執筆陣(当時は若手精鋭)が数ページにまとめたすぐれもの。基本的な前提として若い時分にさらっておくべきものと思う。もう書店で見ることは無いが、絶版なのだろうか。惜しすぎる。店頭のワゴンで50円のシールを貼られ風に晒されていた。ドキュメント現代史は200円。これも読みふけったのは浪人時代だから、もう40年以上前になる。購入の金がなく全巻を食い入るよう立ち読みで読破した。電停洛北高校前の葵書房。勁草書房の吉本全集も200円だ。伏見から滋賀に転居する際だから30数年前のこと。全巻処分した。「最後の親鸞」や「世界認識の方法」などたくさんの単行本や「良寛」など地方出版社のものや切り抜き記事など、吉本にかかわる一切合切を廃棄した。
今こうして購入して手に取るのは、かつてのようにその思想の深淵に一人降りて行く求道心のためでは無い。もうそれは深いところで身にしみこんでいる。その引き出しを開け、空気を想起するためのIDカードのようなもの。
「日本の拷問と処刑史」副題が「惨!血も凍る地獄絵巻」ww 下卑た好奇心を刺激して耳目引きつけようとするこうしたおどろおどろしいタイトル本はよく目にする。しかし、実はしっかりした資料に基づく貴重な良書というものがたまにある。コンビニにずらり並んでいる中身無価値な煽情本とは違う。あの類は反吐が出る。この本はとてもいい。めっけもの。古代から近世にわたる刑事政策史通覧。
これらはすべて創作の資料であり、触媒。
そしてその小さな古書店に行ったいちばんの目当てはこれ。能楽の謡い本が軽く百冊以上売っている。100円から300円というところ。宝の山だ。実際に買うと実は高い。しかしこれを手元に観劇するかどうかで全然違うのだ。楽曲の歌詞のように、覚え見に染み、馴染んだらいいのだが、それまではこれに頼るほかない。ところどころ書き込みがある。趣味で学んでいた人が手放したものではないか。謡いをやってみたくもなる。購入は四冊。
満ち足りた気分。