「ペトリコール」(鮎京慈仁)神戸新聞同人誌評に
神戸新聞(2025/4/23付)の文芸同人雑誌評に『WORKS1』掲載の「ペトリコール」が取り上げられた。鮎京慈仁の作品だ。うれしい。
これまで『WORKS』からは「サラ・ジェーン」(桑島明大)が『週刊図書新聞』に、そして「影炎ナイフ」(陸田京介)、「雲の火ばなが降りそそぐ」(原浩一郎)が『季刊文科』に取り上げられており、今回の神戸新聞で文芸誌紙等への取り上げは四作目になる。
また今回の評は「新雑誌、珠玉の作品群」と表題が付されており、評者の葉山ほずみ氏から冒頭「WORKS」について特に言及されている。
「『WORKS』は文芸エムから派生した新しい雑誌で『魂の文学』『生きる武器としての文学』を掲げる。掲載作品はどれも魂を削るように生み出されたのだろうと思えるクオリティーの高さだった。」
なんともうれしい紹介だ。
身内の関係者ばかりを相手に、得てして的はずれな卑下や自己満足に陥りがちな文芸同人誌の風土を脱して、『WORKS』は書き手が当然にこだわる「書く意味」を超えて、読み手にとって「読む価値」ある作品を生み出すべく創作を果たすことを明確に志向している。だから文芸誌紙による同人誌作品評と、残念ながら依然論評いただいていないもののプロの作家批評家編集者からの評価を、編者である私は切望している。それがそもそも発刊の主旨だから。
取り上げられた鮎京慈仁は『文芸エム』編集委員で、『WORKS』寄稿者の中ではもっとも若い。神戸新聞に作品が取り上げられるのは今回三回目で、これまでに「季刊文科」の同人誌季評でも作品を論評されたことがある。熟達した技巧を凝らすタイプではないが、なにより作品全体から繊細で静謐な人やものごとへの慈しみが隠しようもなく滲み出ているオリジナルな作風は比類のない資質を大いに物語っている。
優れた作品は評価されるべきだ。鮎京慈仁作品のひそやかな輝きを見落とすことなく掬い上げ、紹介いただいた評者葉山ほずみ氏にはなにより感謝したい。
そして寄稿者、投稿者一堂へのエールと受け止めたい。『WORKS』創刊、『文芸エム』第2期創刊にいただいた、この上ない励ましである。