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アントニオーニ「太陽はひとりぼっち(L’eclisse 日食)」1962

ミケランジェロ・アントニオーニ監督の「太陽はひとりぼっち」を観た。まずこの邦題はちょっと悲しい。原題は「日食」である。「情事」「夜」に続くアントニオーニ監督の「愛の不毛三部作」と称される作品なのだから、そのまま「日食」或いは「日蝕」で良かっ...

世阿弥 能「砧(きぬた)」

NHK日本の芸能 能「砧」 捨て置かれた女の恨み物語である。京に訴訟のために上った夫から音信が絶えて三年たち、ようやく間もなく帰ると伝えられ、妻は中国故事になぞらえ夫に思い届けよと砧(きぬた)を打つ。砧とはアイロンのように洗った衣服を叩く木...

書くこと

スマートレターが届いた。一体何がと開いたら、もう30年近く前に自費出版した私の小説だった。添えられた手紙もなく、どのような意図で送付されたのか分からなかったが、汚れて染みの広がる一冊だけしか手元に残っていなかったので、まだ美しいその一冊はと...

喜劇である悲劇

ヒロトのブルーハーツに、どんな記念日なんかよりあなたが生きている今日はなんと意味があるのだろう、と叫ぶ歌があった。LiveStandなど正月のライブでは、「記念日」を「お正月」に置き換えて「どんなお正月なんかより」と歌っていた。 正月はただ...

六角獄舎の図面

六角獄舎の図面をようやく入手した。近代以前の獄舎については小伝馬町の獄舎の資料が多く残されている。但し、江戸の所在なので規模もひどく大きいし、各藩の獄舎についてはどうしてもわからない。せめて京都の六角獄舎ならばと思い探したがネットではその大...

演技「汚れ」考

演技「汚れ」考 〜劇団男魂(メンソウル)「バカデカ 勿忘草」 前に僕が書いた映画シナリオについて、脚本の師匠から「キャストするなら主役はどんな俳優さんがいいですか?」と問われた。シナリオの主人公は使命感などかけらもないやさぐれた刑務官だ。僕...

劇団男魂-「バカデカ 勿忘草」2019

演劇論は一冊も読んだことはないが、自分なりに悲劇と喜劇の関係については呑み込んだ。きっかけはメンソウルの舞台だが、見ていくとあらゆる悲劇は喜劇に移し替えることができるし、その逆も同様だ。しかし寅さん、チャップリンと言った喜劇が愛されるの同じ...

杉本凌士(劇団男魂)-「but and」2014

劇団男魂(メンソウル)の劇「but and」の上映会を行った。もう5年前の舞台映像だが、その力は圧倒的だ。 メンソウルワールド、そのエッセンスである座長にして脚本演出を手がける杉本凌士ワールドと言いかえてもいいのだが、私が惹かれてやまないの...

作者の死

作家がその物語に登場する人物である「私」として小説を書くとき、作家は人物に憑依され「私」となる。しかし例えば群像小説など、それぞれの登場人物が体験する主観世界を併存させて物語るときなど、作家は「私」ではなく、無主体?の超越的な人格として、よ...

國分功一郎『中動態の世界 意志と責任の考古学』(医学書院)

 國分功一郎『中動態の世界 意志と責任の考古学』(医学書院) 斎藤環書評 <リンク>  我ならざる我、私を支配している自動回路が暴かれて、私たちの世代が時代の空気価値観としてそのままに吸収してきた近代的自我や主体性理論がすでに効力を失って久...

第40回京都演劇フェスティバル 2019

昨日、京都演劇祭に出かけた。数年前にも一度参加したことがある。そのときは確か、府のコンクールで受賞したという高校演劇部の劇を観たのだ。それは水上勉原作の有名な戯曲で、とても見応えがあって驚いたのを覚えている。今回は、中島貞夫監督シナリオ塾で...

杉本凌士脚本演出・劇団男魂「but・and」2014

凄い舞台を見た。感想もすぐにはまとめられなかった。劇団男魂(メンソウル)の「BUT AND」だ。2014年第15回公演の収録映像を見せていただいたのだ。 なんと言えばよいか、杉本舞台のテイストは最高なのである。素晴らしい。いつも男魂の劇をこ...

安田登「能 – 650年間続いた仕掛けとは」2017

ここにも記したがNHKで久しぶりに能を堪能し、そのまま余勢を駆って安田登の「能-650年続いた仕掛け-」を一気に読んだ。面白かった。と、さらに能に造詣の深い著名なある随筆家を特集するテレビ番組があり、録画しておいた。名前はよく見知ってはいた...

creation

▼ Anly – MANUAL ▼ The Blue Hearts – Too Much Pain ▼ 友部正人 – お日様が落っことしたものはコールタールの黒 ▼ 熊木杏里 – 朝日の誓い ...

NHK古典芸能への招待 観阿弥「卒都婆小町」2019

卒都婆小町は観阿弥作の能楽である。観阿弥は能楽を確立した世阿弥の父だ。 美少年世阿弥は将軍義満から特別の寵愛を受け、上流階級の中で成長していったのだが、その環境基盤を築いたのは父観阿弥である。観阿弥はもともと奈良大和で様々な芸を披露する芸能...

捨てたもんじゃない

ほんの短い期間だったが、こっそり事前投票事務のバイトをした。2回目だが久しぶりに会う顔もあってちょっとした同窓会気分だ。市井の人たちの中に入るのは楽しい。立場や役割でふんぞり返っている滑稽な男たちよりも、組織や権威とはかかわりなく実は太々し...

「惡の華」と「稲中卓球部」

男魂の舞台映像を観たせいで、「惡の華」を別なアングルから見ることができるのではないかと思った。先に書いたように、「惡の華」は暗く荒涼とした鬱の世界が描かれている。しかし、悲劇は喜劇でもある。それは描き方次第。だから男魂作品は喜劇と悲劇が折り...

劇団男魂(メンソウル)「GRAPEFRUIT MOON」2011

劇団男魂(メンソウル)の第11回本公演「GRAPEFRUIT MOON」をDVDで観せていただいた。素晴らしかった。 劇のあれこれ書きたいのだが、あまり内容に触れるとネタバレになってしまう。しかし、よい作品はあらかじめあらすじを知っていても...

押見修造「惡の華」2014

Asa-Chang&巡礼のhanaの美しさに惹かれて辿るうちに、押見修造に出会った。若い人の間ではよく知られた漫画家なのだろうか。先日、若い友人が「開放倉庫」に連れて行ってくれた。メジャーになる前、もう何十年も前のvillage ...

生死一体への郷愁

先月、ある著名な格闘技選手の母親にあたる方にお会いした。私はその方を間接的にしか知らずにいたのだが、その選手のことはよく知っていた。特に珍しい姓ではないので、その方と選手を結びつけることなどなかった。ひょんなことからその方の息子さんが格闘技...

約束

高校時代をひとつのモチーフとした短編を書いた。また突貫で二週間で仕上げたのだが、よくない書き方だと自分でよくわかっている。中途で全体構成の修正を思いついても断念せざる得ないし、書き上げ一息ついたあとで細々としたしくじりに気がついてしまうもの...

魂として

古い作家たちのインタビュー映像をyoutubeに見つけた。伊藤整が進行役となって、三島由紀夫を交え鼎談形式で川端康成にノーベル賞受賞を記念してインタビューする映像があり、とても興味深かった。川端ははなから正面きって自作を語る気はない様子だが...